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2022年08月09日

盛り上がってなさそうな市長リコールはもうすぐ署名締め切り!

前回、総合運動公園問題に絡んで市長のリコール運動が始まっていることを記事にしましたが、続報を書けないまま明日で終了になります。

盛り上がってなさそうな市長リコールはもうすぐ署名締め切り!
 ※つくば市長リコール住民投票の会のホームページのスクリーンショット

総合運動公園の住民投票の時は、署名活動を頻繁に見掛けましたし、身の回りに署名活動をしている人もいましたが、今回は全くといっていいほど見聞きしないので、おそらくリコールは住民投票までたどり着かないでしょう。

それは、リコール運動の目的が市民生活と遠い内容だからだと思います。
また、前回の市長選で落選した候補者が代表となってリコール運動をしているから、というのも1つの理由かもしれません。
今回は、この分かりにくいリコール運動の目的と必要性(不要性?)について考えてみます。

そもそも、総合運動公園の基本計画を白紙に戻した際の住民投票条例の直接請求と違って、市長の解職請求(リコール)は法律上のハードルが高いのです。
条例の直接請求は有権者の1/50以上の署名が必要(地方自治法第74条)であるのに対して、地方公共団体の長の解職請求には有権者の1/3以上の署名が必要(地方自治法第81条)となり、格段にハードルが上がります。

それほど高いハードルのリコールの目的は何かと、「つくば市長リコール​住民投票の会」のサイトを見てみるとこんな感じです。
※以下、イタリック体は引用部分です。

「なぜ今、五十嵐市長のリコール(解職請求)が必要なのか」
1.五十嵐市長は公約したUR都市機構との交渉をなぜ本気でやらなかったのか?
2.市議会も、都市計画審議会の議論も無視して、強引に売却手続きを進めている。
3.業者の選定と契約条件は、五十嵐市長と買い取り業者だけで決めている!


それぞれのリコール理由について、妥当なのかどうか考察してみました。
1.本気で交渉したら、URは土地を買い戻したのか?
2.市議会や都市計画審議会を無視したのか?
3.業者の選定と契約条件の決め方におかしい点があるのか?

1.本気で交渉したら、URは土地を買い戻したのか?
 仮定の話ですので、水掛け論になってしまいますが、URが買い戻すことはとても考えにくいですね。
 今の五十嵐市長になってから立ち上げられた「総合運動公園事業検証委員会」の報告書が2017年4月17日に公表されており、「本件検証における調査結果からは、個人的な動機が介在した事実や不正の事実等は認められなかった。」と結論づけられています。
 したがって、適法に売却された土地をURが買い戻さなければならない法的根拠がありませんので、本気で交渉しようがURが買い戻すことはないと考えられます。

2.市議会や都市計画審議会を無視したのか?
 リコール住民投票の会のサイトにも、「令和4年1月11日、議会特別委員会で、つくば市は「市開発公社から民間への売却になるので議会の議決は必要ない」と説明し、市議会の与党多数派もこれを認めました。」と書いてあるんですよね。
 全然市議会を無視してないですが…

 都市計画審議会についても、審議会の役割はこれからです。
 先に都市計画を変更してから土地売却の公募をする方が分かりやすいのは確かですけどね。
 しかし、都市計画法第19条を見ると、「市町村は、市町村都市計画審議会(略)の議を経て、都市計画を決定するものとする。」とあり、都市計画決定の前に審議することが義務づけられているのみです。審議会が独自に都市計画を決めるわけではなく市の案を審議するのが役割ですから、つくば市が今後元総合運動公園用地を準工業地域に変更する予定であることを宣言することは別におかしくないですし、今後審議会の議を経るのですから無視しているとはいえません。

3.業者の選定と契約条件の決め方におかしい点があるのか?
(つくば市長リコール住民投票の会)
・売却は、議会の議決なしに進められています。「土地を所有しているのは市の土地開発公社であってつくば市ではない」というのがつくば市の言い分です。


 2.でも書いた通り、議会は議決が要らないことを認めているのに、何が問題なのかがよく分かりません。

(つくば市長リコール住民投票の会)
・さらに、現在つくば市が提示している「1つの民間事業者への一括売却」は、買い取る業者側に圧倒的に有利な条件です。


 つくば市の「売却にかかる公募型プロポーザル」のページに実施要領が掲載されていますが、圧倒的に有利とは思えません。
 1番大きな制約は10年間にわたる買戻権ですが、その他にも4万平米以上の防災多目的広場や2500平米の防災備蓄倉庫を自前で整備した上で市に賃貸する条件ですし、国道408号の左折レーン整備や県道の拡幅用地を拠出し整備費用も負担する条件になっています。
 公募時にはこんな条件で手が上がるのかと思いましたが、4者も参加したうえに最低売却価格をはるかに上回る110億円で、防災備蓄倉庫は20年間無償で貸与という条件でグッドマンジャパンが選定されました。

(つくば市長リコール住民投票の会)
・「7名の学識経験者の審査を経る」とは言っていますが、審査委員が誰なのかは公表されていません。研究学園都市と日本の科学技術の未来を危うくする企てに、賛同する学識経験者は居るでしょうか?


…と主張されていますが、この種の審査委員は公募時には公表されないのが通常だと思います。ロビー活動の標的になり公正な選定プロセスの障害になるのが間違いないですからね。事後に公表すると審査前から市が言っているので、その通り公表されれば問題ないでしょう。
 「賛同する学識経験者は居るでしょうか?」と書かれていますが、高エネ研の研究者だった酒井代表は、学識経験者がみんな自分と同じように「高エネ研南側用地の売却は問題だ!」と考えているはずだと思い込んでいるのでしょうね。審査委員を務める学識経験者の専門は、法律や公共政策であることが多いでしょうから、高エネ研南側用地に思い入れがあるとは思えません。
 具体的な用途も利用の目処もない用地を売却するという、つくば市の方針を否定するほどの動機を持つ学識経験者の方が少ないと思います。

…とここまで書いたら、「つくば市長解職請求署名簿」に書かれている請求の趣旨には、また別のことが書かれていることに気付きました。

①旧総合運動公園の売却を止めさせて、同用地を市民の公共の福祉と国益を守るために活用する
②市長の解職によって、市長と与党議員の一体化が進む4年に一度の市長・市議選同一選挙を改め、2年に一度、民主主義の原則に基づき、市長選と市議選を交互に実施する
③市民一人当たり年間8万円という、市民の税負担に見合った仕事をする市役所に改革する


この3項目が書かれていますが、ますます意味が分かりません。
①について
 「用地を市民の公共の福祉と国益を守るために活用する」と主張していますが、URに買い戻させて活用するという意味が分かりません。URは用地が不要になったため売却したのですから、仮に買い戻してくれたところで、他に売却するだけでしょう。
 かつて高エネ研の研究者だった酒井代表には現役時代から思い入れがある用地なのでしょうが、半世紀以上研究所用地として確保されながら使われなかったためにURが売却したのであって、売却を阻止したところで何か研究施設用地として活用される計画も具体的な案もありません。酒井代表からすれば、売却を阻止し将来の活用可能性がゼロではなくなれば本望なのかもしれませんが、一般市民からすれば110億円の売却収入を得る機会を失うわけです。
 売却を阻止できたとしても、高エネ研に用地が渡るわけでもなく、元の未利用地に戻るだけです。(高エネ研が取得しようとしていたのに不当に阻止されたというなら別ですが。)
 つまり、土地売却阻止が実現したとしても、酒井代表の個人的願望が実現する見込みは限りなくゼロで、①の目的は果たされないということになります。これに110億円の売却益を捨てる価値があるとは思えません。

②について
 「市長と議員の同時選挙という変則的な選挙」という主張は、もはや認識違いとしか言い様がありません。
 住民投票の会の方々は、「統一地方選挙」という言葉をご存じないのでしょうか?
 新憲法施行時の第1回選挙で、市町村長と市町村議会議員は全て同時に選挙を行ったため、4年に1回同時に選挙する市町村が多数派でした。市町村長が任期途中で辞任したり、議会が解散したりして、市町村長選挙と市町村議会議員選挙の時期がずれた市町村が増えてきただけです。
 したがって、「市長と議員の同時選挙」の方が本来の姿だと言えます。

③について
 はっきり言って、解職請求の趣旨として不適当だと思います。
 任期途中で市長を解職すべきだと主張するにもかかわらず、町村合併時からあるという「二重管理職」(と、住民投票の会が主張する)制度を理由に解職請求していますが、今の五十嵐市長がつくったわけでもないのに理屈に合いません。
 しかも、酒井代表は③を公約にして前回の市長選に立候補して落選しています。リコール運動を敗者復活戦として利用していると言わざるを得ません。

 私がぐちぐちブログに書かなくてもリコールは成立しないと予想しますが、住民投票の会の酒井泉代表といい、NEWSつくばの坂本栄理事長といい、今の五十嵐市長は高齢の男性に支持されない(というより激しく嫌われる)傾向にあるようです。
 そのうち、このことについてもブログに書いてみようと思います。


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Posted by Science_City at 23:53│Comments(0)総合運動公園問題
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